マイルスの音楽を分析するということ~「マイルス研究1」

Miles_Davis

1. 偉大なるマイルスマニアを追悼する

2015年1月28日、中山康樹氏が死んだ。元スイングジャーナル編集長、幾多のマイルス・デイヴィス関連書籍の翻訳や執筆で知られる人物だ(※没後出版されたもののひとつに、マイルス・デイヴィス自伝の改訂版がある)。享年62歳。まさか自分がマイルス(享年65歳)よりも若く亡くなるなんて病魔が襲うまで考えもしなかったのではなかろうか。

listen-to-miles-v8彼のこなしてきた仕事のなかで、最も偉大な業績、それは違法なブートレグ(海賊版)も含めた膨大すぎるマイルス・デイヴィスのディスコグラフィーをまとめた「マイルスを聴け!」だと断言して間違いない。最初のバージョン(1992年)では350ページほどの著作だったものが、バージョン8(2008年)では文庫本サイズでありながら「1100ページ以上」に達した。前人未到……いや、他の誰もこんなことは出来ないし、そもそもしないであろう。

その後は、マイルスの前半生のみに絞った新しいバージョン(2011年)が出されるも、そこで潰えてしまった。これまでの功績を讃えると共に、心よりご冥福を祈りたい。

2. マイルス・デイヴィス没後25年へ向けて

この記事を書いている9月28日はマイルスの命日。亡くなって24年が経つが、彼の音楽への理解は果たして深まっているのだろうか? 本国アメリカでは、博士論文クラスの研究が色々と出ているが、ここ日本においては前述した中山氏のほか、小川隆夫氏などのリアルタイムにマイルスと交流をもてた世代のあとは、ミュージシャン 菊地成孔氏&大谷能生氏による大著が目立つぐらいだ。しかし、菊地&大谷両氏による著書は実のところ、音楽的な分析は非常に限られているし、マイルスの音楽の魅力は伝わるかもしれないが、実際の音楽の謎解きにはそれほど寄与しないというのが、私の偽らざる正直な意見だ。

私は大学院時代にマイルス・デイヴィスを研究テーマに選んだ。その際に培った視点は、とりわけ電気楽器を導入した70年代の作品群を理解する上で大きな助けとなるものだと大きな自信を持っている。

しかし論文というものは、学者を主たる読者に設定している書き物であるため、このブログでは論文の形態のまま一般向けに公開するのではなく、これまで明らかにされてこなかった電化マイルスの話題を中心に、「ジャズのリスナー(聴衆)」や「ジャズミュージシャン」にとって新たな発見をもたらす情報を提供していきたい。

「評論家」でも「ジャーナリスト」でも「ミュージシャン」でもない立場から、マイルス・デイヴィスの音楽に興味を持っている皆様に新たな知見を提供もたらし、更には日本におけるジャズを記述していく活動がこれまでの「批評・評論」から、「分析・研究」へと新たな段階へ向かうことを願ってやまない。

次回予告

⇒ マイルス・デイヴィスと、音楽の形式(かたち)の問題(※10月22日以降に更新予定)

小室敬幸

投稿者: 小室敬幸

作曲と音楽学を学び、現在は音楽に関する色々な仕事をしています。かつてはNPOで働き、現在は大学などに勤務。WEBサイト(http://reclassica.com/)